植木屋の仕事で使う鋏には、木鋏、剪定鋏、芽切り鋏、刈込鋏など、いろいろなものがあります。
形も使い方も違えば、腰につける位置や出し入れの仕方も違います。鋏そのものに合わせてつくるだけでなく、実際に仕事で使ってみると、「もう少しこうしたい」と思うところも出てきます。
ここでは、これまでにつくってきた鋏の革ケースを、道具や考え方の違いが見えるいくつかの流れに分けて紹介します。

木鋏ケースの形を考え続ける
木鋏ケースは、わたしが革ケースづくりを始めた頃から何度もつくってきたものです。
鋏の収まり方、腰につける位置、使う人の違い、革の取り方、つくりやすさ。似たような道具を入れるケースでも、何を優先するかによって形は変わります。ここでは製作順に並べるのではなく、それぞれ違うことを考えてつくった代表的な木鋏ケースを紹介します。
Diagonal R/k
市販の木鋏ケースへの不満から試作を重ね、「丈夫で、使いやすく、美しいもの」を自分なりに初めて形にできたケースです。その後の革ケースづくりにも大きな影響を与えた、わたしにとって原点の一つです。
Diagonal L/k
Diagonal R/kとは反対方向へ鋏が傾くケースです。同じ右利きでも、ケースを腰のどこにつけるかによって使いやすい傾きが違うことを、人に使ってもらって初めて知りました。
Elephant Sheath
Diagonal R/kができたあと、もう一度スタンダードな木鋏ケースの形を考えてつくったものです。一枚革から折り込むようにつくる構造や、見慣れた形を自分なりにつくり直す面白さが残っています。
Two thirds/k
鋏の柄をもっとつかみやすくできないかと考え、ケース上部を大胆になくしてみた木鋏ケースです。狙った使いやすさは得られた一方で、実際に腰につけてみると別の問題も出てきました。
Mebuki Sheath
初めて木鋏ケースをつくる人でも取り組みやすいように考えたケースです。大きな一枚革を必要とせず、比較的小さな革から部材を取れることと、つくりやすさを優先して構造を考えました。
DRstitch/k
Diagonal R/kをもとに、少し大きな木鋏が入るよう図面を見直したケースです。飾りのステッチも加え、同じ基本形でも道具の大きさや仕立て方によって雰囲気が変わる一例になりました。

一本の剪定鋏に合わせてつくる
木鋏はどれも比較的似た形をしていますが、剪定鋏はものによって大きさや刃の形、角度などが細かく違います。
いろいろな剪定鋏が入るよう余裕を持たせたケースも便利ですが、自分でつくるなら、目の前にある一本へ合わせることもできます。ここでは、特定の剪定鋏に合わせてつくったケースを紹介します。
Classic Y/s
知り合いの植木屋さんから頼まれ、その人が使う剪定鋏に合わせてつくったケースです。剪定鋏ごとの形の違いに合わせて、ぴったり収まる形を考えています。
飛庄用・外山刃物用二種
飛庄と外山刃物、それぞれの剪定鋏に合わせてつくった二つのケースです。汎用性を求めず、「一つの道具のために革ケースをしつらえる」というハンドメイドならではの考え方がよく表れています。

FELCOのケースを使いながら変えていく
わたしが長年仕事で使っている剪定鋏がFELCOです。
同じFELCOを入れるケースでも、一つつくって終わりではありませんでした。実際に使って気になったところを直したり、別の収まり方を試したり、仕立て方を変えたりしています。この3本は、次の順に読むとその流れが分かりやすいと思います。
01 Felco Classic Sheath
FELCOを仕事で使うためにつくった、わたしの中では最もスタンダードな剪定鋏ケースです。基本形を大きく変えず、使いながらごみ抜き穴や横幅などを少しずつ直し、現在まで使い続けています。
02 DR Felco
Felco Classic Sheathを使う中で、鋏がまっすぐ収まる形より、斜めに入った方が自分には使いやすいのではないかと考えてつくったケースです。木鋏ケースDiagonal R/kを使った経験も、この形につながっています。
03 DR Felco stitch
DR Felcoをもとに、木鋏ケースDRstitch/kとお揃いになるよう飾りのステッチを加えたケースです。同じ機能を持つケースでも、縫い方一つで見た目の印象が大きく変わりました。

木鋏の代わりになる鋏を探す
長く使ってきた木鋏ですが、使い続ける中で不満を感じるところもありました。そこで、木鋏の代わりとして芽切り鋏を仕事で使えないか試したことがあります。
道具を変えれば、それを入れるケースも必要になります。この二つの記事は、そんなところからつながっています。
01 TRUNK
木鋏以外の選択肢として芽切り鋏を試してみようと考えたときの話です。新しいケースをつくろうとしたところ、以前の失敗作が偶然ぴったり収まり、そのケースを使うことになりました。
02 MEKIRI
TRUNKでとりあえず芽切り鋏を収めることはできましたが、それだけでは終わらず、あらためてその鋏のためにつくったケースです。クロスステッチも取り入れ、新しい道具に合わせて新しい鞘をしつらえました。

刈込鋏のケースとホルダーをつくり直す
刈込鋏は、普段腰につけている木鋏や剪定鋏とは少し違う道具です。保管するときには大きな刃を覆いたい。一方、仕事中には使っていない刈込鋏を腰へ保持できると便利です。
以前から刈込鋏のケースやホルダーはつくっていましたが、あらためてつくり直したのがTIPとFRUSTUM、そして二つを一つにしたCAPIROTEです。
01 TIP
長年使っていた刈込鋏の刃を保護するケースを、約10年ぶりにつくり直したものです。長く使ってつぶれてきた先端を見て、今度はもっと傷みにくい構造を考えました。
02 FRUSTUM
作業中の刈込鋏を腰へ保持するためにつくり直したホルダーです。TIPと同じクロスステッチを入れ、二つをお揃いの革道具として仕立てました。
03 CAPIROTE
保管用のTIPと、作業用のFRUSTUM。この二つは、実は最初から組み合わせることを考えてつくっていました。二つを接続して一つの刈込鋏ケースにした状態がCAPIROTEです。
同じ「鋏ケース」でも、入れる道具や使い方が変われば、考えることも形も変わります。
ほかの革ケースについても見てみたい方は、革ケースのエピソード一覧からご覧いただけます。