革ケースは、完成したときが終わりではありません。
仕事で実際に使ってみると、つくったときには気づかなかった不満が出たり、思っていたところとは違う場所が傷んだり、「次につくるなら、ここを変えたい」と思うことがあります。
つくって、使って、不満が出て、またつくる。
最初から完成形を考えて、その通りにつくり続けてきたわけではありません。使う時間の中で問題が見つかり、それを直したものをまた使う。そんなことを繰り返した結果、道具の使い方や革ケースの形は少しずつ変わってきました。
ここでは、実際に使った時間そのものが次の形につながったエピソードを紹介します。

小型鋸を使う仕組みを、使いながら育てる
普通の剪定鋸とは別に、小型の鋸をもう一本腰につけて使う。
この使い方は、最初から今の形が見えていたわけではありません。小型鋸を仕事で使ってみて問題が見つかり、それを直すために次の形を考える。そうして、鋸とケースだけでなく、持ち歩き方や使い方まで含めた仕組みが少しずつ変わってきました。
01 Pockesaw
小型鋸のグリップを革で覆い、革ケースと組み合わせた最初の形です。見た目にはかなり気に入っていましたが、実際に仕事で使ってみると、鋸がケースから落ちてしまうという問題が出てきました。
02 WiredSaw
Pockesawで分かった落下の問題から、鋸と腰を伸縮するワイヤーでつなぐ仕組みを取り入れました。単に鋸を落とさなくなっただけでなく、切り終わるたびに鞘へ戻さなくてもよいという、新しい使い方にもつながりました。
03 StrapSaw
WiredSawを何年か使う中で、今度は金属ワイヤーの耐久性などが気になるようになりました。そこでワイヤーをナイロンストラップへ変え、鞘、巻取り機構、ベルトループまでを一つにまとめ直したのがStrapSawです。
04 TwigSaw EDAKAGE
StrapSawも、実際に使ってみると構造上の問題が見つかりました。ぱっと見は大きく変わらなくても、ストラップの位置や革のつなぎ方などをもう一度見直してつくり直した、現在の形です。
鋸ケースそのものの素材や、通常サイズの剪定鋸ケースについては、「鋸と革ケース」でまとめて紹介しています。

腰道具全体も10年で変わった
一つの革ケースだけでなく、剪定仕事で腰につけている道具全体を振り返ってみても、使いながら少しずつ変わってきたことが分かります。
2015年、2019年、2025年。やっている剪定仕事そのものはそれほど大きく変わっていません。それでも、その時々に使っていた道具と革ケースを並べてみると、腰まわりはかなり違っています。
01 剪定革ケースセット2015
木鋏、剪定鋏、剪定鋸という3つの道具を、同じ雰囲気の革ケースで揃えた最初のセットです。この頃は、無駄をそぎ落としたシンプルな形を強く意識していました。
02 剪定革ケースセット2019ver.
4年後には小型鋸が加わり、革グリップや飾りのステッチなども増えました。一つの革ケースから生まれた発想が、別のケースへ広がっていった時期でもあります。
03 剪定道具の革ケースセット2025
2015年から10年。木鋏は芽切り鋏へ変わり、剪定鋸ケースは純革製のWoodyWaveへ、小型鋸はStrapSawへと変わりました。昔の写真と並べて初めて、自分でも思っていた以上に腰道具が変わっていたことに気づいたセットです。

傷んだからこそ分かったこと
仕事道具として使う以上、革ケースはいつまでも新品のままではありません。
汚れたり、擦れたり、形が崩れたり、ときには壊れたりします。でも、その傷み方を実際に見ることで、つくったときには分からなかったことが見えてくることもあります。
あの革ケースセットがズタボロに…..それを目にしてわたしが考えたこと
2015年につくった革ケースセットを数年後に見たとき、そこにあったのは、つくったときの面影からはずいぶん変わった姿でした。最初はその傷み方にショックを受けましたが、造園の現場で使う仕事道具とはどういうものなのかを、あらためて考えるきっかけになりました。
刈込鋏ケース TIP
以前つくった刈込鋏ケースを、気づけば約10年使っていました。まだ壊れてはいないものの、トラックの中で押され続けた先端はつぶれていました。その傷み方を見たうえで、「今度は10年経っても先端がつぶれにくいものにしたい」と考えてつくり直したケースです。
こうして振り返ってみると、新しい革ケースをつくる理由は、何かまったく新しいものを思いついたからとは限りません。
今使っているものに少し不満がある。長く使って傷んできた。つくったときには気づかなかった弱点が見えた。
そんなところから「次につくるなら、もう少しこうしたい」と考える。その繰り返しが、道具の使い方や革ケースの形を少しずつ変えてきました。
鋏の種類ごとの革ケースについては、「鋏と革ケース」でまとめて紹介しています。
ほかの革ケースについても見てみたい方は、革ケースのエピソード一覧からご覧いただけます。