今回紹介するのは、刃渡り135mmほどの小さな鋸を使った「TwigSaw」という鋸システムです。
そして今回つくったものには、さらに固有の名前まで付けました。
TwigSaw EDAKAGE
です。
なんだか大げさな名前ですが、自分の中ではこれがなかなかよく出来まして、単にTwigSawだけではちょっと味気ない。それなら固有名まで付けてしまおうとなったわけです。
ただ、このTwigSawは突然思いついてつくったものではありません。
もともとは一丁の安価な小型鋸から始まり、
Pockesaw → WiredSaw → StrapSaw → TwigSaw
と、仕事で使っては問題を見つけ、そのたびにつくり直してきた鋸システムの、現時点での最新版です。
TwigSaw EDAKAGEとは
Twigというのは、小枝や細い枝という意味です。
つまりTwigSawは、その名の通り小枝を切るための鋸。
そして「EDAKAGE」は漢字で書けば、
枝影
です。
どういう意味だよ、という話ですが(笑)
イメージとしては忍者です。小さな鋸なので狭い枝の間にも入りやすく、樹上でも取り回しやすい。
あっちからでも、こっちからでも、
「そこ切りたい」
と思った枝へスッと刃を入れられる。
まるで神出鬼没に現れて、いろいろな方向から切断したい枝へアクセスしていくようなところから「枝影」としました。
まあ、わたし一人で勝手にそう呼んでいるだけです(笑)
鋸本体はずっと同じものを使っている
このシリーズで使っている鋸本体は、Pockesawの頃からずっと同じです。
石鋸工業の「現場屋 ケース付万能鋸 135mm」。
特別高価な鋸でもありません。
むしろ、
すぐ手に入る。
値段が安い。
そして、よく切れる。
という、非常に実用的な鋸です。
何代も鋸システムをつくり直してきましたが、鋸本体を別のものへ変更する必要は感じませんでした。それだけこの135mmというサイズと、この鋸そのものを気に入っているということです。
始まりはPockesawだった
この小さな鋸を使い始めた時、こんなに短い鋸が剪定で使いやすいとは思っていませんでした。普通の剪定鋸なら200~300mmくらいが一般的で、わたし自身も250mmほどの鋸を使っています。
小型鋸は、それとは別に使う二本目の鋸です。
刃先が細いので狭い枝の間へ入りやすく、樹上のように腕を大きく動かせないところでも少ないストロークで切ることができます。しゃがんだ時に長い鞘を地面へ引きずることもありません。
小さいから大した枝は切れないかと思えば、意外とそれなりの太さまで切れてしまう。
普通サイズの剪定鋸の代わりというより、細かな剪定をする時には小さいからこそ使いやすい場面が結構あるんですよね。

そんな小型鋸が気に入って、ケースを革で覆い、柄まで革で覆って出来たのがPockesawでした。
小型鋸最大の弱点「失くす」
ところが、小さいことには弱点もあります。
失くしやすい。
落としやすいうえに、地面へ落ちると見つけにくい。実際、何度か行方不明になりました。
そこで、
「だったら鋸を体につないでおけばいい」
と考えました。
最初はいろいろ試したのですが、最終的に巻取り式のリールストラップへつなぐ方法に落ち着きました。これなら鋸を落としてもどこかへ行ってしまいません。

ところが実際にやってみると、思わぬメリットがありました。
鋸を使い終わった瞬間、そのまま手を離せる。
さらに、
作業のたびに鞘へ戻さなくてもいい。
普通の鋸なら、
出す。
切る。
しまう。
また出す。
これを何度も繰り返します。
でもストラップにつながっていれば、切り終わったら手を離すだけ。次に必要になったら、ぶら下がっている鋸をまた掴めばいい。
これが普通サイズの大きな剪定鋸だったら、腰の横でぶらぶらしているのがかなり気になると思います。
でも、この鋸は135mmほどしかありません。小さいから、ぶら下げたままにしていてもそれほど邪魔にならないんです。
失くさないために始めた方法だったのに、こちらの方がむしろ大きな発見でした。
そして生まれたのが、
WiredSaw
です。
WiredSawは良かった。でもワイヤーが切れた
WiredSawでは、プロ用工具の落下防止に使われる巻取り式の金属ワイヤーを使いました。これがなかなかよく出来ていて、使用感そのものにはかなり満足していました。
ところが、一つ大きな問題がありました。
ワイヤーが切れる。
しかも少しずつ傷んでいるのが分かるならいいのですが、ある日突然切れます。実際、わたしの場合は1年ほど使ったところで突然切れることがありました。
鋸を失くさないためにつないでいるワイヤーが切れて、気が付いたら鋸がない。
これでは本末転倒です(笑)
さらに、WiredSawは鋸の鞘とリール部分が別々に存在していて、革紐でつながっているだけでした。
使える。
非常に便利。
でも、一つの道具として見ると、どこかまだ仮設感がある。
そこで次は、
ワイヤーをやめる。
そして鋸ケースとリールを一体化する。
という方向へ進みました。
WiredSawからStrapSawへ
そこでつくったのがStrapSawです。金属ワイヤーだった巻取りコードをナイロンへ変更。
そして、
鋸の鞘。
巻取り式リール。
ベルトループ。
これらを革で一つのユニットにまとめました。

これでかなりまとまりました。WiredSawのように後からリールをぶら下げた感じではなく、一つの鋸システムとして成立したように見えます。
完成した時には、
「これはかなりいいものが出来たんじゃないか」
と思っていました。
実際、使い勝手も良かったです。
しかし仕事で半年使うと、また問題が出る
ところがです。
StrapSawを実際の仕事で半年ほど使ってみると、また気になるところが出てきました。
しかも、この二つについては比較的早い段階で、
「ここ、たぶん良くないな」
と感じていました。
一つ目は、
リールからコードが繰り出される位置。
二つ目は、
革を駒合わせ縫いした部分のヘタリ。
予想は見事に当たりました。うれしくない方の的中です(笑)
鋸がぶら下がる位置が低すぎる


StrapSawでは、リールからコードが横方向へ出る構造になっていました。
これによって、鋸を鞘から抜いて手を離した時、鋸がぶら下がる位置が少し下過ぎました。
ほんのわずかな違いではあるのですが、仕事中に何度も掴むものです。
そのたびに、
「あ、もうちょっと上にあれば取りやすいのに」
となります。
そこでTwigSawでは、コードの繰り出し方向を変更しました。
横ではなく真上。

これによってリール本体も上下方向に安定して固定されるようになり、ぶら下がった鋸の柄も手を伸ばしやすい位置へ来るようになりました。
外から見ると地味な違いです。
でも、こういうところは実際に一日中使うと結構違います。
コの字が、やがてフの字へ

もう一つの問題が革部分です。
StrapSawでは、鋸の鞘と後ろ側のパーツをコの字型につなぎ、その直角部分を「駒合わせ縫い」という方法で縫っていました。
革で箱状のものをつくる時などに使う縫い方です。
つくった時はきれいにコの字でした。ほらこのように。
しかし、
「ここ、そのうちヘタるんじゃないかなぁ」
と思っていたら、
やっぱりヘタりました。
最初はコの字。やがて崩れコの字。そして実際、フの字くらいまで来ました。
このまま使い続けたら、いずれ真一文字になるんではないでしょうか(笑)
使えなくなるわけではありません。
でも見た目がよろしくない。自分でつくったものだけに、余計に気になります。
そこでTwigSawでは、直角部分を駒合わせ縫いでつなぐ構造をやめ、ループ状の形へ変更しました。
これならStrapSawのように角の部分が徐々にヘタって、形そのものが崩れていく問題は避けられそうです。
TwigSawでさらに細かい部分も改良
絶対に直したかったのは今の二点でしたが、せっかく新しくつくるので、他にも気になっていたところを変更しました。

まず、鋸を入れる鞘の上側。
StrapSawでは、鞘とそれを固定している土台部分を上まで縫い合わせていたため、全体がベタっと固定されていました。
TwigSawでは上部だけをあえて縫い合わせず、鞘がベルトループ側からほんの少し開くようにしました。
わずかな動きではありますが、それによって鞘に少し余裕が生まれ、鋸をしまいやすくなります。

そしてもう一つ。鋸の鞘の底には、切粉やゴミを外へ出すための穴を開けています。
木を切った鋸を毎回きれいに払ってから鞘へ戻す人は、たぶんそんなにいないでしょう。
わたしもそんなことはしません。
当然、切粉は鞘の中へ落ちます。
そこでTwigSawでは、この排出口も以前より大きくしました。
どれも劇的な変更ではありません。でも、自分で仕事に使う道具というのは、こういう小さな積み重ねの方が重要だったりします。
TwigSawではなく「TwigSaw EDAKAGE」にした理由

こうして完成した新型を見ていると、自分でもかなりよく出来たと思いました。鞘本体は厚い革を何枚も重ねて仕立てているので、かなり重厚感のある姿になりました。
StrapSawよりもリール部分と鞘の一体感が増して、
「小型鋸にリールを付けたもの」
というより、
「最初からこういう一つの道具だった」
ように見えるようになりました。
これはちょっとTwigSawだけでは味気ない。だったらこいつには名前まで付けてやろう。
ということで、
TwigSaw EDAKAGE
となりました。
実はこれ、ニョンパさんからの依頼品
ところで今回のTwigSaw EDAKAGE。
自分用につくったものではありません。
依頼品です。
そして依頼主は、
ニョンパさん。
またかよ(笑)
このブログを長く読んでいる方なら、
「この人、ニョンパさんにしか革ケースつくってないんじゃないの?」
と思うかもしれません。
だいたい合ってます(笑)
以前、わたしが使っていたStrapSawを実際に見たニョンパさんから、
「これ、つくってよ」
と頼まれていました。
ただ、その頃にはすでに自分の中でStrapSawの弱点が分かっていました。
図面もあります。
同じものなら、そのままつくれば早い。
でも、自分で、
「ここは良くない」
と思っているものを、人へそのまま渡すのはどうにも許せなかった。
それで結局、新しく構造から考え直すことになりました。
商売の才能は相変わらずない
考えてみれば、おかしな話です。
別にこれを商品として大量販売しているわけでもありません。
同じStrapSawをそのままつくれば早い。
それでも、
「ここ良くないんだよなぁ」
と思ってしまったら、そこを直さないと気が済まない。
いつもの病気を発症してしまいました。
結果、図面まで引き直して、また新しいものをつくり直す始末です(笑)
「もっと楽にお金になることをやればいいのに」と、お思いでしょう。
そうです。わたしは本当はこんなことをやっていたくはないんです。
ファイヤーして、ただただ、暇と金を持て余す人生を送りたいんです。
札束で人の頬をパタパタするようなろくでなしになるのが本当の夢です。
ところが現実にやっていることは、一円にもならない革ケースの細かい構造を考え直している。
どうも人生というものは、なかなか思い通りになりません。
「これは植木屋に爆受けするでしょ!」

ところで、完成したTwigSaw EDAKAGEをニョンパさんへ渡したところ、これはかなり喜んでもらえました。
鞘本体の革の重なりもあって見た目には重厚感があり、ちょっと高級そうにも見えます。
リール部分もすっきり収まり、一つのシステムとしての完成度もStrapSawより数段上がりました。
そしてニョンパさんから出た言葉、
「これは植木屋に爆受けするでしょ!」
わたしも、
「そうでしょ~、そうでしょ~」
くらいには思っていたのですが、
今のところこの記事に爆受けした形跡はありません(笑)
静かなものです。
そして進化はまだ終わらなかった
ここまで読むと、
「ではTwigSawで完成ですね」
となりそうですが、どうやらそう簡単ではありません。
WiredSawでは、金属ワイヤーが使い続けるうちに切れてしまいました。その弱点の一つを解決するつもりで、StrapSawからはナイロンコード式のリールへ変更しました。
ところがその後。
ナイロンコードも切れました(笑)
しかも、おおよそ同じくらいの期間使ったところで。
おい。
結局切れるんかい。
現時点では、TwigSawの革部分や構造についてはかなり満足しています。
初代Pockesawから始まり、第二世代のWiredSaw、第三世代のStrapSawと改良を重ね、今ではなんとiphone SEを超える第四世代TwigSawまで来ました。
一つのシステムとしてかなり完成された形になったと思っています。ただし、巻取りリールそのものには、まだ課題が残っているようです。
完成したと思ったら、また次の問題が出てくる。
そして、
「じゃあ次はどうしようか」
と考え始める。
Pockesawをつくった頃から、ずっとこれの繰り返しです。
たぶん、この鋸システムが本当に完成する日は来ないんでしょうね。
まあ、それはそれで面白いのかもしれません(笑)
