木鋏ケースDRstitchは、初期のころに作成した木鋏ケースDiagonal Rを元に、ステッチ入りのスタイルを取り入れたものでした。
この雰囲気が自分の中でちょっと気に入りまして、どうしてもお揃いのものをつくってみたくなりました。
木鋏ケースと剪定鋏ケースのお揃いをです。
そんなわけでできましたのが、このDR Felco stitchです。この原型は前の記事で紹介したDR Felcoで、ここに飾りのステッチを取り入れたものです。
ステッチが革の縁をめぐる炎のようで、凛々しくて素敵すぎます。というあなたの声が私に届いていますよ。
アレッ、気のせいか。
裏はこんな感じになっています。
ステッチが革の縁をめぐる炎のようで、凛々しくて素敵すぎます。って、やっぱり言いましたよね?
いや、実はね、このステッチ入りを前々からやってみたくてやらなかったのには、ちょっとした理由がありましてね。
簡単に言うと、きれいに仕上げる自信がちょっとなかったんです。
わたしとしては、手縫いというのはなかなか難しいものだな、と思っていて、美しいままつじつまを合わせて完結させるのには、ある程度の経験やちょっとしたコツが必要だと思います。
手縫いの世界は奥深い!
実は、これは手縫いに限った話ではなく、美しいままつじつまを合わせて完結させるというのは、あらゆる仕事でとても重要視すべき点ですよね。
特に、人に感動を与えたり、喜んでもらうことが目的の仕事をしている人にとっては大事な理念のはずです。
わたしがしている仕事でもこの考え方がものすごく大事だと思っていて、実際にはなかなかできないところであります。
例えば、庭というのは一綴(つづ)りのストーリーですので、美しくなくてはいけないのは当然として、プロローグ⇒本編⇒エピローグまでのつじつまが合わないとリズムが狂っておかしくなってしまいます。
そして、難しいのはつじつまが合うというのは、単に筋が通っていればいいだけでなく、底流には常に一定の呼吸が内包していなければいけないことです。
映画や小説という世界でさえも、これは難しいですね。
作り手というのはどうしても途中で息切れを起こし、そこから息づかいが変わってしまうということが起こります。
まあ、たかだか小さな革ケースの縫い目の話ですが、思いっきり遊ぶというのはこういうことです。
そして、一目一目穴をあけ、一目一目縫っていった末に完成するハンドメイド革ケースというのは、なんとも味わい深いものです。