木製鋸ケースへの不満から生まれた、最初の革ケース|Classic SN/n

ハンドメイドオリジナル剪定鋸革ケース

わたしが最初につくった革の道具ケースは、鋏ケースではなく鋸ケースでした。

当時、剪定鋸のケースは木製かプラスチック製のものがほとんどでした。プラスチック製は丈夫で、仕事で使うには理にかなっているのですが、発売された当初のものはどうにもチープな感じがして好きになれず、わたしはずっと木製の鋸ケースを使っていました。

ところが、この木製ケースにはかなり不満がありました。

とにかく割れやすいんです。

濡らしてしまえば、新品でも一発アウトなんて経験もありますし、仕事中に鋸の柄を何かに引っ掛けただけで、張り合わせてある木の部分がパッカーンと割れてしまうこともあります。

仕方がないので、割れないように木製ケースの上からビニールテープをグルグルして使っていました。

でも、そこまでして使っていると、

「これ、もうプラスチック製でも変わらないんじゃねぇ?」

という、なんとも言えない貧乏くさい感じになります。

だったら最初からプラスチックにすればいいじゃないか、と言われそうですが、それは何でしょうね。

当時何となくそれは嫌だったんです。

木製ケースをヌメ革で包んでみた

木製の鋸ケースを何かで覆ったもの自体は、ごくたまに見かけることがあります。このブログで紹介している鉈ケースや、土佐片盛300に付属していたケースもそうですが、使われているのは薄いビニールや合成皮革です。

革製剪定鋸ケース革コーティング

そこで、この割れやすい木製ケースを、もっとしっかりした本物の革で包んでみたらどうだろうと思いました。木製ケースの外側をヌメ革ですっぽり包んでみると、これが思った以上にいい出来栄え。

それまでビニールテープをグルグル巻きにされていた鋸ケースが、急にずいぶん立派な顔になりました。

見た目だけじゃなく実用的!割れない丈夫な鋸ケース

見た目が良くなっただけでも、この時点ではかなり満足していました。ところが、実際に仕事で使い続けてみると、もう一つ思いがけない効果がありました。

中の木製ケースが割れなくなったんです。

木製の鋸ケースが割れる原因は、大きく二つあると思っています。

一つは水に濡れること。もう一つは、仕事中に鋸の柄を枝などに引っ掛けたとき、鋸と一緒にケースの前面まで引っ張られてしまうことです。

木製ケースは薄い木を張り合わせてできているので、こういう力にはあまり強くありません。ところが、外側をヌメ革ですっぽり包んでしまうと、革が木製ケース全体を押さえてくれます。

濡れることに対しても多少の保護になりますし、何かに引っ掛けたときも、木製ケースだけに力が集中しにくくなったのだと思います。少なくとも、この鋸ケースにしてから、それまであれだけ悩まされていた木製ケースの割れはなくなりました。

「見た目がいいから革を巻いてみた」ではなく、ここで初めて「これ、ちゃんと仕事道具としてじつようてきにもなっている」ということに気付きました。

革製鋸ケースベルトループ部

市販の木製鋸ケースであれば、ベルトループはほぼ合成皮革ですが、この鋸ケースは厚めのヌメ革をしっかりと縫い付けてありますので、切れることはまずない丈夫なつくりになっています。

この成功が、次の革ケースにつながった

ハンドメイド鋸革ケース

この鋸ケースは、わたしが最初につくった革の道具ケースでした。とはいっても、中には既製品の木製ケースが入っています。ケースそのものを一から設計したわけではありません。

今振り返ってみても、最初につくる革ケースとしては、このくらいがちょうどよかったのだと思います。

木製ケースを基準にして形を取ることができるので、鋏ケースのように「道具をどう収めるか」というところから考える必要がありません。それでも、革を切って、縫って、実際に仕事で使えるものを自分でつくるという一連の流れは経験できます。

そして何より、これが思った以上にうまくいきました。

見た目も気に入った。
実際に仕事で使えた。
あれだけ不満だった木製ケースも割れなくなった。

「革で道具ケースをつくるのって、意外とできるかも」

そう思えたことが、わたしにとっては大きかったのだと思います。

もし、この最初の鋸ケースで盛大に失敗していたら、その後も革ケースをつくり続けていたかどうかは分かりません(笑)。

でも、うまくいった。

だから今度は、既製品のケースを革で包むだけではなく、道具に合わせてケースそのものをつくってみようと思うようになりました。

その次につくったのが、木鋏ケースです。

ここから、わたしの革ケースづくりは少しずつ次の段階へ進んでいきました。

そして本格的な革ケース製作のエピソードがはじまる

この鋸ケースで手応えを感じたあと、次に挑戦したのが木鋏ケースでした。鋸ケースは中に既製品の木製ケースが入っていたので、その形を利用してつくることができました。ところが木鋏ケースには、そういう都合のいい土台がありません。

今度は、鋏をどこまで収めるのか、どんな形なら抜き差ししやすいのか、腰に着けたときにどうなるのか。ケースそのものを一から考えなければなりませんでした。

そうしてつくったのが、Diagonal R/kです。鋸ケースから一歩進んで、自分で革ケースそのものを設計するようになった話はこちらで紹介しています。

この鋸ケースをつくってみたい人へ

Classic SN/nのような鋸ケースは、中に既製品の木製ケースを使うので、革ケースづくりの中では比較的つくりやすい形です。わたし自身も、最初の革ケースとしてここから始めました。

同じような鋸ケースをつくってみたい人向けに、型紙づくりから革の切り出し、縫製、仕上げまでを別の記事で詳しく紹介しています。

Classic SN/nでは木製の鋸ケースを革で覆いましたが、その後、「もっと丈夫そうな素材を」と考えて試したのがMedSawです。

木製ケースを革で覆ったClassic SN/nから、プラスチック、そして純革へ。これまで鋸ケースの素材や構造を変えてきた流れは、「鋸と革ケース」でまとめています。