今回はこの鋸ケースの作り方を解説します。
この鋸ケースで使用している革の厚みは、本体部分が2㎜厚、ベルトループ部分が3㎜厚です。
このケースはつくるのが比較的簡単で初心者向けの作品ですが、この記事(鋸ケース | Classic SN/nのエピソード)にあるように簡単な割には格好よく、かつ機能面でも優れものですので、ぜひ挑戦してみてもらいたいと思います!
オリジナルは型紙作成がキモ!
革ケースづくりは、おおざっぱに言うと次のような工程を踏みます。
- 型紙づくり
- 革の切り出し
- 切り口断面などの処理(省略も可)
- 縫う
慣れないうちはどの工程でも難儀するのは当たり前ですが、オリジナルで作品をつくる場合、これら工程の中で慣れてもある程度の時間を要するのが1の型紙づくりです。
型紙さえ正確にできていれば、後の工程はどんどん慣れてきて、早く上手にできるようになるでしょう。
したがって、オリジナル作品においては型紙づくりがキモになります。
鋸ケースの型紙づくり
準備
ここで紹介する鋸ケースは、既存の木製ケースを革で包んだ構造になっています。ですので、市販の木製またはプラスチックの鋸ケースを用意します。
今回は、この木製鋸ケースを使います。
まずは、邪魔な既存のベルトループを外します。この木製ケースのベルトループは2個のカシメでとまっていますので、これをクイキリという道具でこのように切って取り外します。
採寸
次に、このケースに合わせた型紙をつくるわけですが、このような場合、わたしは元となる木製ケースを紙で包みながら型紙をつくっています。鋸ケースが比較的簡単だ、という理由の一つが実はこれです。採寸が比較的簡単にできます。
鋏ケースをつくる場合は、ここのところの難易度が少し上がります。
最初に、このように紙の上に鋸ケースを置き、この形に線を引きます。
線を引くとこのようになると思います。
次に、このようにケースを紙できっちりと包み、角のところに跡が付くように紙を押さえます。
開くとこんな感じに跡が付いていると思いますので、この跡に線を引きます。
はじめにケースに沿って引いた線が下の二本の線で、今引いたのが一番上の線と左の縦の線です。
最終的に、一番上の線と下の線が縫い目の線になります。
続いて、一番上と下の線(縫い線)の外側にのりしろ(1㎝)を書いたのが上の画像です。
この外側の線に沿って切り抜いていきます。
外側の線に沿って切り抜いたのが上の画像です。
次に、縫い線に沿って数か所ホチキスどめをします。
すると、こんな感じになります。
修正
試しにさっきの木製ケースを差し込んでみます。
そうすると、はじめからぴったり納まるということはありません。長すぎたり、角度が微妙に違ったり、といったずれが必ずありますので、ホチキスを外して、線の修正を何度か行うとある程度ぴったりの紙ケースが出来上がると思います。
線の修正とともに、ここではまだ付けていないベルトループの部分も作って行きます。
調整を繰り返してできたのがこのようなものです。
今回製作した鋸ケースの図面がこちらになります。
革と紙の厚みは違うので注意!
ここで一つの問題があります。
それは紙と革では厚みが違うということです。ここ重要です。
この型紙の元となる紙ケースをつくる際に、ぴったりのサイズでつくってしまうと、実際に革でつくった場合は、ピチピチになり過ぎて木製ケースが中に納まらないという事態になります。
ですので、この紙ケースをつくる時は、少しサイズに余裕をもってつくるのがコツになります。
そうは言っても、はじめはどれくらい余裕を持たせればよいかわからないと思います。
あくまで目安を言うと、厚み2㎜の革でつくる場合、木製ケースと作成した紙ケースの間に1㎜程の隙間ができるくらいが良いのではないかと思います。
後でもう一度これについては触れますが、実際作ってみて、「ちょっと緩すぎたな」という場合は問題ありません。(ぶかぶかではダメですが)
それよりもタイトにつくり過ぎてしまうと、木製ケースを差し込む際に難儀しますし、最悪の場合、入らずにつくり直しになってしまうこともありますので、「ちょっと緩いかな」くらいの方がまだいいです。
型紙作成
先程までで作成したのは、あくまで正確な寸法を写し取った図面です。
この正確な寸法を革に写して切り出すための一つの方法として、一般的に行われているのが厚紙を使った型紙です。(上の画像)
つくり方は簡単で、先程作った図面を厚紙にノリで貼り付け、切り出せばいいだけです。
画像だとさっきの紙切れと見分けがつきませんが、上の画像は厚紙でつくった型紙です。
ベルトループになる型紙のパーツをよく見ると左端に穴が4つあいているのが見えると思います。このように型紙には、縫い出しなどの目印となる穴を自分で工夫してあけておきます。
ちなみに、参考までに書いておくと、この型紙のベルトループのサイズは、230㎜×40㎜で、本体とは30㎜角の正方形に縫い付ける設定になっています。つまり、上の画像で確認できる4つ穴が30㎜角の角部分になっています。
けがき
作成した型紙を革の上にのせて、型紙外縁に沿って、目打ちと呼ばれる道具で目印の線を引きます。
ちなみに、この工程を「けがき」と言います。
目印の穴がある場合は、この時に忘れずに付けておきます。
ここでは、本体にベルトループを縫い付ける部分の四つ角の目印を付けています。
革を切り出す
けがきの線に沿って切り出した革がこれです。線に沿って正確に切り出しましょう。
正確な型紙をつくっても、正確に切り出さないと台無しになってしまいます。
上の画像では、それぞれのパーツに丸印が4つずつ付いてしまっていますが、縫い付けるだけならこのような印は不要ですので気にしないでください。(今回ボタンを付けたかったので、このような印を付けています。)
ところで、革を切り出す際は、革包丁という専用の道具もありますが、これは大き目のカッターで十分です。ただし、正確に切れないので鋏はやめましょう。
縫う
切り出すところまでできてしまえば、あとは組み立てるだけです。
型紙で縫いはじめの位置などの目印を付けていれば、それに従って縫っていけばいいだけですので、それほど問題はないかと思います。
この鋸ケースの場合、縫い付ける部分もベルトループと本体サイド(横)の2か所のみですので簡単です。
縫い方についての細かい解説は、ここでは省略します。
そうして縫いあがったのがこれです。念のために付け加えておくと、縫う順序としては、「ベルトループの縫い付け」⇒「本体サイド(横)を縫う」の順です。
この後、本体サイド(横)の縫った部分の横の余分な革をお好みの幅でカットして完成です。
最後にここをカットするのが面倒な人は、型紙の時点でのりしろの部分の幅を完成時の幅にしてもいいですが、はじめの内は、縫い終わった後で直線にカットする方がきれいに仕上がると思います。
ですので、この解説ではのりしろ部分を1㎝としています。
ベルトループ部分はこんな感じで縫いあげればよいかと思います。
ベルトループの長さや取り付け位置に関しては細かく書きません。というのも、きまりなんてありませんし、どこでもいいのです。自分の好きな位置に好きな長さで付けてみてください。
仕上げ
ここまで出来たら、木製ケースを中に差し込んでみましょう。
先程も書いたように、多少ゆるいのは問題ありません。というのも、ピチピチに作ったものでも長く使っていると、木製ケースの収縮や革の伸びなどで、段々と緩くなってきてしまうことが多いからです。
そのため、いずれにしてもすっぽ抜け防止のための方策が必要です。
わたしがやっているのが、上の画像のようにねじで固定してしまう方法です。
革+木製ケースの厚み分くらいの小ねじを用意し、下穴をあけたうえでドライバーで回せば簡単に取り付けできます。こうしておけば、多少緩くても問題なく使えます。
ねじを取り付ける場所はどこでも構いません。とにかくすっぽ抜けなければよいのです。
おまけ
革を切り出した際に丸印が付いていて、それについてちょっと書きましたが、ベルトループをボタン取り付けに変えることもできます。
上で解説したように、完全に縫い付けてしまうと、ノコギリを頻繁に取り外して使う人は不便です。そんな場合は、ボタンですぐにベルトから取り外せるようにすると便利です。
完全に縫い付けるタイプの方が見た目にシンプルでよく、わたしもずっとそれを使っていたのですが、最近の仕事の仕方の変化で、この長さの鋸を取り外すことが多くなりましたので、このようなものも作ってみました。
自分の仕事で使いやすいようにカスタマイズし、どんどん使いやすくアップグレードできるので、やはりハンドメイドはいいですね!
鋸ケースのつくり方まとめ
冒頭のほうでも書いたように、このケースづくりで一番難しい点は、いかにぴったりのサイズでつくれるか(型紙づくり)というところだと思っています。
革の切り口(コバ)の仕上げ方などレザークラフトでは、凝ろうと思えばいくらでも凝れるのですが、はじめのうちはそういうことは考えなくてもいいと思います。何なら切りっぱなしでも構いません。実際、市販の革工具ケースは無処理なのが普通ですし。
オリジナル作品では、とにかく思ったようなフォルムやサイズでできるように型紙づくりを頑張ることがはじめは重要です。
以上、解説で何かご不明な点があれば、質問してください。答えられる範囲でお答えしています。