剪定鋸「土佐片盛240」の革ケースを製作|譲り受けた鋸のために

ハンドメイド剪定鋸土佐片盛用革ケース

十数年前に一本の土佐片盛を譲ってくれたニョンパ ツォゲェルさんから、ある日再び一本の鋸が届きました。今度は、普段使っている鋸とほぼ同じ240mmの土佐片盛。しかも、ひと手間加えられた特別な一本です。これは専用の革ケースをつくるしかない――今回の話は、そんなところから始まります。

話は十数年前の一本から

ハンドメイド剪定鋸ケース土佐片盛クロス縫いバージョン

わたしが植木屋として独立したばかりの頃、このブログにも何度か登場している先輩植木屋のニョンパさんから、「土佐片盛300」という手打ちの剪定鋸を一本譲ってもらいました。

その鋸との出会いや、土佐片盛という鋸のこと、実際に使ってみて感じたことについては、TOSA-KM300sheathのエピソードに詳しく書いています。

それから十数年経ったある日。
ニョンパさんから、再び「土佐片盛」が送られてきました。

今度は300mmではなく、240mm。
ここから今回の革ケースの話です。

 

土佐片盛再び

剪定鋸土佐片盛本体

この通り。
優しいニョンパさんがある日突然こんなものを送ってきてくれましたよ。プレゼントだそうです。

そして、この鋸はなんと10数年前にもらったものと同じ土佐片盛の240㎜バージョンというではないですか!!

えっ!そういう長さのバリエーションがあったの?という驚きもさることながら、な、な、なんと!

通常刃だったものを改良刃にカスタマイズしてもらったというではないですか!

そんなアクロバティックなことができるんですか~?凄い手間のかけようです!

何でも、岐阜の道具屋さんで偶然二本見つけて、それを別のところで改良刃に改造してもらったということでした。

しかも、二本しかない内の片方をわたしにくれるなんて。240㎜なら普段わたしが使っている鋸MedSawとサイズ的にも同じだしきっと使いやすいはずです。

 

よ~し、これは専用の革ケースをつくるしかない!

そして、お礼にニョンパさんにもそれをプレゼントして喜んでいただきましょう!

というわけで、今回のTOSA-KM240sheathの製作をはじめたという次第です。

土佐片盛240のために見直した3つのこと

この鋸ケースは、MedSawやPockesawのデザインをベースとして土佐片盛というノコギリ用にカスタマイズしたものです。

ちなみに、MedSawやPockesawとは下のノコギリケースです。

ハンドメイド剪定鋸ケース2種

画像からは、ぱっと見デザイン的にはほとんど変わらないかもしれませんが、鋸ケースのサイズ、グリップのサイズ共に違うものですので、見た目は変わらなくてもほとんど一から型紙を作り直すことになりました。

これまでの鋸ケースから今回のものでマイナーチェンジしているのは主に3点。

・見た目:鋸ケースの縫い方を二重縫いからクロス縫いにしている点
・構造面:グリップをそれまで二枚を縫い合わせていたものから一枚革にした点
・ 〃 :グリップの革ひもの通し方を上下逆にした点

細かい変化などどうでもいい話のようですが、何が言いたいかというと、作ったものを使って考えながら次の作品をより良いものに改良して行っているということです。

少しずつ進化していると実感できることがつくる喜びでもあります。飽きっぽい性格で同じものを作るのが嫌なだけだろ!とも言えますねw

 

創作には経験が必要な場合もある

ハンドメイド剪定鋸ケース土佐片盛クロス縫いの仕上がり

今回、ケース部分はクロス縫いというバッテンに縫っていく方法をとっていますが、こうして見るとなかなか味わい深いですね。

このクロス縫いの鋸ケースですが、実はかなり前に一度試みたことがありました。

鋸ケースをつくり始めて間もない頃、これは絶対いいものができるぞ!と期待して作成したのですが、結果は自分が思ったような風合いが出ずにガッカリしたものでした。でも、その時は何が悪いのか?どうすればいい雰囲気に仕上げることができるのか?方法がわからず、それからクロス縫いの鋸ケースに挑戦することはありませんでした。

で、今回と前回では縫い目の位置と糸の色が違うというだけで、それほど大きな変化ではないのですが、今回はなかなかいい感じにできたと思っています。何事も経験というものが必要な場合があるものですね。

ハンドメイド剪定鋸ケース土佐片盛グリップの仕上がり

経験と言えば、構造的な改良点であるグリップにしても同様です。MedSawの時より確実に経験が活かされて、見た目も耐久性も良くなっています。

こうして完成したのがここまででお見せしてきた画像の製作物です。これは自分用ということもあり、少し遊び心を入れてつくりました。

ニョンパさんには本人に少し希望を聞いて、ちょっとだけ違うデザインのものを作ってお渡ししました。

 

手作り剪定鋸ケース土佐片盛二重縫いバージョン

それがこれです。
訳あって出先のホテルでしか撮影できなかったので、ちゃんとした画像に残せなかったのが残念ですが、これを渡したらニョンパさんも喜んでくれました。

そして、これは使うのがもったいないね、と言ってくれましたが、わたしの方はというと、この新しい手打ち改良刃鋸がもったいなくて使えそうにないという気持ちなのでした。

 思いと技術が詰まった道具は美しい

ハンドメイド剪定鋸ケース土佐片盛イメージ

やはり人の手でつくられたものには、特別な美しさを感じてしまうものですね。

機械やロボットがやっても全く同じ鋸ができるかもしれませんが、やはり同じ人間としてつくることの喜びや苦しみを知っているからこそ心に染み入るものがあり、共鳴するものがあります。そして、その共鳴から新たな美しいものが生まれていく。

人の手でしたことやつくったものには、人にしか感じることのできない価値があり、それこそが人の手でやることの意味であり、人が生きることの意味ではないかと思ったりします。

普段、合理的でないことは極力したくない性格の自分が、なぜ、こんな非効率な革細工や植木屋を続けているのかと考えた時、どこかでそれを証明したいと思っているからなのでは?と思うことがあるのです。

今回軽く触れた鋸のグリップをピックアップした記事はこちら!

 十数年前、ニョンパさんから最初に譲り受けた「土佐片盛300」の話はこちら!