刈込鋏ケースを10年ぶりに作り直す|TIPの製作エピソード

自作刈込鋏ケース赤糸クロスステッチ入り

今回、刈込鋏の革ケースを新調しましたのでそちらの紹介をします。

名前は、TIPにしました。

「刈込鋏ケース」といった場合、仕事中に腰に下げておいて出し入れするようなケース(ホルダー)と刃の部分をカバーする保管用のケースの二つを思い浮かべるかもしれません。

今回は後者の保管用。刈込鋏をトラックに積んでおく時などに、刃を保護するためにつけておくカバーをつくりました。

これまで使っていた刈込鋏ケースをつくったのは、もう10年ほど前。特に壊れたわけでもなく、今でも普通に使えるのですが、長年使っているうちに先端がだいぶつぶれてしまいました。

そこで今回、久しぶりにつくり直すことにしました。形を少しきれいにするだけなら、これまでと同じものをつくれば済みます。

でも、せっかくつくり直すなら、

今度は10年経っても先端がつぶれにくいものにしたい。

そして、どうせなら少しくらい見た目も楽しくしたい。

そんなところからできたのがTIPです。

刈込鋏はいつも使う道具ではないけれど、いつでも使えるようにしてあります

刈込鋏というのは、生垣や玉づくりの仕立物など、樹木を刈り込む時に使う鋏です。

植木屋なら誰でも常に使うのかというと、そういうわけでもありません。手入れの仕方は職人によってかなり違っていて、刈込鋏を頻繁に使う人もいれば、あまり使わない人もいます。

わたしの場合は、普段腰につけている鋏や鋸で剪定することが多く、何でもかんでも刈込鋏で刈るようなことはしません。むしろ、できるだけ刈り込まずに済むなら、その方がいいと思っています。

とはいえ、生垣など刈込鋏を使う方が適している場合もあります。

出番はそんなに多くはありませんが、いつ必要になるか分からないので、刈込鋏自体は仕事のトラックに常に積んであります。

そして、この刈込鋏。刃が大きいうえに、ちょっとしたことで開いてしまうことがあります。そんなものを裸のままトラックの中へ放り込んでおくわけにもいきません。

市販の刈込鋏ケースでは駄目なのか?

わたしは普段、道具の革ケースは自分でつくることにしています。

とはいえ、革ケース製作をはじめる前は売っているものを使うしかありませんでしたので、かつて竹屋で刈込鋏ケースを買ったことがあります。

ところが、自分の刈込鋏とは刃のサイズが微妙に合わず、つくりもあまり良いものではありませんでした。特にケースが抜けないように留めておくホックまわりは、少々頼りないつくりでした。

刈込鋏というのは、製品によって刃の長さや幅、形状が思いのほか違います。

そのため、市販品で自分の鋏にピッタリ合い、なおかつつくりもしっかりしたケースを探そうとすると、これが意外と難しい。

だったら、自分の刈込鋏に合わせてつくってしまえばいい。というわけです。

とりあえずつくったケースを、気づけば10年使っていました

わたしが現在まで使っているケースをつくったのは、それまで使っていた刈込鋏が壊れ、新しいものを購入した時でした。

刈込鋏を買ったはいいものの、さすがにこの大きな刃物をむき出しでは置いておけない。

ということで、急遽革でケースをこしらえました。

ハンドメイド刈込鋏革ケース

特に変わった構造ではありません。普通です。

革を刈込鋏の刃の形に合わせ、周囲を普通に平縫いした割とスタンダードなものです。

間に合わせでつくったとはいえ、市販されている汎用品の刈込鋏ケースと違い、サイズはピッタリで、つくりも見た目もそれなりに良いものだったとは思います。

ただ、当時のわたしにとっては、

必要だからとりあえずつくったもの。

それ以上でも以下でもありませんでした。

このブログでも長いこと紹介していませんでしたし、名前すらつけていません。

ところが、気づけば10年ほど使っています。

そつないつくりで、スタンダードなものは意外と長く使えるのかもしれませんね(笑)

刈込鋏ケースについては、その後「Snail」という別の形もつくりました。

ただ、こちらは残念ながらわたしにとっては失敗作となり、ほどなく人に譲って手放しています。

刈込鋏ケース「Snail」の製作エピソード

Snailの記事の中でも少し登場していますが、実際にずっと使い続けていたのは、名前すらないこちらのケースでした。

10年使っても壊れてはいない。でも先端はつぶれました

約10年使ったケースを見てみると、革が破れたり、穴が開いたりしているわけではありません。使用するうえでは、今でも特に問題ありません。

ただし、先端が少しつぶれてしまっています。

自作刈込鋏ケース経年先端潰れ

原因は使い方というより、保管方法です。

仕事用のトラック車内には、いろいろな道具を積んでいます。

限られた収納場所の中へ刈込鋏を押し込んでおく関係で、どうしてもケースの先端に力がかかってしまい、革だけでできたケースなので、押され続けて変形してしまいました。

今のところ穴が開いているわけではありませんが、変形して刃と革が当たり続ければ、いずれ傷んでくる可能性もあります。

とはいえ、保管用のケースです。

腰につけて人前で使うわけでもありませんので、見た目を気にしなければ、このまま使い続けても特に困りません。

実際、TIPをつくる直接の理由も、

「古いケースが使えなくなったから」

ではありませんでした。

刈込鋏まわりの道具を少し新しくしてみようと考えているうちに、

「せっかくだから、このケースもそろそろつくり直してみようか」

ということになった感じです。

今度は先端がつぶれないケースにできそう

このブログでは、小型の剪定鋸について、

PockeSaw

WiredSaw

StrapSaw

TwigSaw

と、何度も形を変えながら使い方を考えてきました。

鋸付属のプラケース
付属のプラケース

名前も仕組みもいろいろ変わっていますが、中で使っている小型鋸そのものはずっと同じものです。その鋸を買うと、もともとプラスチック製の鞘が付属しています。

ところが、わたしは革で自分用の鞘をつくってしまうので、この純正プラ鞘は基本的に使いません。

これまではほとんどゴミ箱行きでした。

ただ、「何かに使えないかなあ」と思って、一つ取っておいたものがありました。

ある日、それをいじくりながら、刈込鋏の刃に差し込んでみると、

付属プラケースに刈込鋏を差し込む

結構いい感じに収まってます!

しかも、これを芯に使えば、旧ケースのように先端がつぶれることもありません。

せっかく新しくするなら、同じものをそのままつくるのも芸がない。

デザインもちょっと見直して、

さあ、これを中に仕込んで製作だ!!

邪魔な突起だけ削って、そのまま革の中へ入れました

プラスチック鞘の刃が入る部分については、一切加工していません。

刈込鋏の刃がそのまま収まりました。

ただし、外側に今回のケースには必要のない突起がついていたので、そこだけグラインダーで切り落としました。

加工した鋸プラケース

ちなみに、この突起を削る作業自体は以前にもやったことがあります。昔、小型鋸ケースを試作した時にも、この部分が邪魔になって切り落としたことがありました。

まさか今度は刈込鋏ケースをつくるために、同じことをするとは思いませんでしたが(笑)

加工したプラ鞘を芯にして、その外側をヌメ革で包みます。

使用した革は厚さ約2mm。木製ケースを芯にしたClassic SNでも使っているような、しっかりした厚みの革です。

プラ鞘自体は、接着したり特別な方法で固定したりはしていません。

革をぴったり合わせてつくっているので、ケースの先端方向へ飛び出すことは構造上ありませんし、入口側から簡単に抜けるような状態でもありません。

仮に抜けたところで、また差し込めば済む話です。

あえて余計な固定はしませんでした。

刈込鋏ケース「TIP」完成

ハンドメイド刈込鋏ケース単体

そして完成したのがこちら。

TIPです。

名前の由来は、それほど大したものではありません。先端部分を覆うケースですし、形も先の尖った姿になっています。

なので、TIP=先端。

まあ、そのまんまです(笑)

中に硬いプラスチックの芯が入っているので、旧ケースとは見た目の印象もかなり変わりました。

革だけのケースと比べると張りがあり、刈込鋏から外した状態でも形がしっかりしています。

刈込鋏を奥までしっかり差し込めば、保管中に簡単に外れるようなものではありませんが、さらにホックで留める構造にしています。

旧ケースにも同じようなホックをつけていますので、ここはほぼ同じ形状。

大きな刃物なので、不用意にケースから抜けてしまわないようにしておくのは大事です。

赤いクロスステッチで、少しだけかわいくしてみました

構造面で今回一番変わったのは、中にプラスチックの芯を入れたことです。

でも、せっかく新しくつくるので、見た目も少し変えてみました。

周囲は普通の平縫いではなく、赤い糸のクロスステッチにしています。

ハンドメイド刈込鋏ケースクロスステッチ部

少しかわいらしい感じにしたかったんですが、完成してみると、思っていた以上。

だいぶラブリーになりました!

まあ、これはこれでいいでしょう。仕事道具だからといって、何も全部が無骨である必要はありません。

植木屋をはじめ、職人の身に着けるものは、ちょっとラブリーさ加減が足りないと思っていたところでしたのでちょうどいいです (笑)

普段はトラックの中に入っていて、それほど人目に触れないものですが、見えないところに気を遣うのが大人の振る舞いというものです。

プラスチックの芯で、今度はもう少し長持ちするはず

今回プラスチックの鞘を中へ入れてみて良かったのは、見た目だけではありません。

刈込鋏の刃と革が直接触れなくなりました。

旧ケースは革だけなので、先端がつぶれて変形した状態でこのまま長く使い続ければ、いずれ刃が革を傷めて穴が開く可能性もあります。

TIPなら、その内側に硬いプラスチックの鞘があります。

特に今回気になっていた先端部分については、以前のようにトラックの中で押されたくらいで簡単につぶれることはないでしょう。

その意味では、耐久性はかなり上がっているはずです。

……とはいえ、

これはまだ実際には使っていません。

本当に10年後までこの形を保っているかどうかは、今のところ分かりません(笑)

そこはこれから使いながら確かめていこうと思います。

名前もなかったケースからTIPへ

旧ケースは、まだ普通に使えます。TIPが完成したからといって、今日からすぐ交換するというわけでもありません。

どこかのタイミングでTIPへ交代させる予定です。

そして約10年間使った旧ケースは、そのまま捨てるつもりはありません。少し手入れをして大事に保管しておき、もし使ってくれる人がいれば譲ってもいいかなと思っています。

最初は、

「刃をむき出しで置いておくわけにはいかないから、とりあえずつくった」

だけのケースでした。

名前もありません。

ブログにも長いこと載せませんでした。

それでも気づけば10年。

その間、刈込鋏の刃をずっと守ってくれました。

そう考えると、間に合わせでつくったものでも、十分役目は果たしてくれたということですね。

そして今度のTIPは、革の中にプラスチックの芯を入れ、

少しだけ丈夫に、

少しだけきれいに、

そして少しだけラブリーになりました。

これからどのくらい長く使えるのか。

旧ケースと同じように10年使った時にどうなっているのか、それも少し楽しみです。

実は、お揃いでもう一つつくりました

今回つくったTIPには、見てもらった通り、赤い糸でクロスステッチを入れました。

実は、同じ赤いクロスステッチでつくった、刈込鋏用のホルダーがもう一つあります。

名前は、FRUSTUMです。

TIPとはまた役割の違う革製品です。

そちらについては、次の記事で紹介します。