わたしは長年同じメーカーの剪定鋏を使っています。
スイスのメーカーFELCO(フェルコ)の剪定鋏です。
現在使っているのはFELCO11ですが、最初に使ったのはFELCO2。その後FELCO6も試しました。
この革ケースは、そんなフェルコの剪定鋏を仕事で使うためにつくったものです。
フェルコとの付き合いについて書き始めると、それだけで革ケースの話までたどり着かなくなってしまいますので(笑)、そちらは別の記事にまとめました。
→ 剪定鋏を使わなかった植木屋がフェルコを愛用するまで|FELCO11との長い付き合い
今回は鋏ではなく、その鋏を入れる革ケース、
Felco Classic Sheath
の話です。
市販のケースでは物足りない
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わたしが手作りするまでもなく、フェルコ用のケースは市販されています。
大きなFELCOのロゴが入ったこんな感じのものです。
「FELCO」ってスタンプされていることを除けば、形としては一般的な剪定鋏ケースとそれほど大きな違いはありません。
剪定鋏を腰にぶら下げて仕事をするという目的だけを考えれば、それで十分です。
というより、それが普通です。
鋏が主役で、ケースはそれを入れておくためのもの。
わざわざケースにまで手間をかけようという人の方が少ないでしょう。
でも、道具の革ケースをせっせと自分でつくっている人間としては、
「そうですか。ケースなんてそのくらいの立ち位置ですか」
と、少々寂しい気持ちにもなるわけです(笑)
だったらこっちは、勝手にやらせてもらいます。
毎日のように腰につける仕事道具なら、使いやすくて、自分が気に入ったものの方がいい。
というわけでつくったのが、
フェルコのための剪定鋏ケース Felco Classic Sheath
です。
最初につくったFelco Classic Sheath

これが最初につくったFelco Classic Sheathです。
フェルコが素直に縦へ収まる、かなりシンプルな形にしました。
最初から何か完成形が頭の中にあったわけではありません。
まず自分で使うものをつくってみる。
そして実際に仕事で使ってみる。
頼まれて、またつくる。
そうしているうちに、
「ここはもう少しこうした方がいいな」
というところが少しずつ見えてきます。
このスタンダードタイプは、その後何個もつくりました。
そして、つくるたび、使うたびに少しずつ形を変えていきました。
使いながら少しずつ改良していく
と言っても、Felco Classic Sheathは、初代から大幅なモデルチェンジを繰り返したわけではありません。
基本的な形はほとんど同じです。
ですから、初代と現在のものを並べても、
「どこが違うの?」
と思うに違いありません。
でも、使って気になった点を次の製作では微調整して使いやすくしています。
主に変えてきたのは3か所です。
底の穴を少しずつ大きくした

剪定鋏のケースを仕事で使っていると、中には細かな枝くずや葉っぱが入ります。
そこで、このケースは底を完全に閉じず、細かなゴミが下へ抜けるようにしてあります。
最初はもっと小さな開口部でした。
ところが実際に使ってみると、
「もう少し開いていた方がいいな」
となる。
そこで改良するたびに、少しずつ穴を大きくしていきました。
それでも葉っぱが一枚うまい具合に引っかかると、そこをきっかけにゴミが溜まり始めることはあります。
完全解決とはいきません。
でも、細かな切りくずならそのまま下へ落ちていくので、閉じてしまうよりはずっと具合がいいです。
ケースの横幅を少し広げた
もうひとつ変えたのがケースの横幅です。
初期のものより少し幅を広げて、剪定鋏が深くケースに収まる余裕を持たせました。
鋏に合わせてピッタリつくることはつくりますが、使っている中で落ちやすいと感じたら、余裕を持たせることもあります。
この辺りは実際に長期間使ってみないとなかなか分かりません。
背面の縫い目をなくした

もうひとつは、ケース背面の縫い目です。
初期のものでは背面にも縫い目を入れていました。
ここは表面の革と裏面の革が二枚重なっているところで、開いたら困るので最初は縫い合わせていました。
でも、何個かつくるうちに、
「ここ、別に縫わなくてもいいんじゃない?」
と思うようになりました。
構造上なくても問題がない。
だったら、わざわざ縫う必要もありません。
そこで、この部分は途中から縫うのをやめました。
何でも手間をかければいいというものではなく、必要のないものなら削ってしまう。
これも改良のひとつだと思っています。
Felco Classic Sheath 2

そうして少しずつ変更を加えてできたのが、Felco Classic Sheath 2です。
「2」と言われましても、ぱっと見には何一つ変わらないと思います。
まあ、そうなんです。
それほど変わってません(笑)
糸やコバの色が違うくらいです。
でも、このケースの場合、それでいいんです。
最初の形そのものが気に入らなかったわけではありません。
基本形はそのままに、仕事で使っていて気になったところだけを微調整していく。
そうやって少しずつ使いやすくしていきました。
Felco Classic Sheath 3

さらに改良してできたのが、現在のFelco Classic Sheath 3です。
単なる色違いではありません。
ただし、
「2から3になる時にここを何ミリ変えて、その前にここを変えて……」
という正確な改良履歴は、もう覚えていません。
何しろ、設計図を前にして新製品開発会議をしていたわけではありませんから(笑)
自分で使いながら、
「ここはもう少しこうした方がいい」
と思えば次につくる時に変える。
そんなことを何度も繰り返して現在の形になっています。
そして、このFelco Classic Sheath 3は今も現役です。
現在普段使っているFELCO11はもちろん、FELCO2でもFELCO6でも問題なく入ります。
専用ケースといっても、特定の一機種だけにギリギリ合わせたものではありません。
わたしが使ってきたフェルコなら、どれも普通に収まります。
鋏が主役なら、ケースだって大事です
普通に考えれば、剪定鋏が主役でケースは脇役です。
だってケースは、主役の道具を入れておくための入れ物にすぎません。
でも、
「剪定を担当しているからって、鋏くんだけがそんなに偉いんですか?」
とも思うわけですよ(笑)
もしケースが、
「どうせ俺なんか、枝の一つも切れませんよ」
と言って家出してしまったら、鋏だけをポケットに突っ込んで一日剪定するわけにもいきません。
仕事で腰につけて使う以上、鋏とケースは結局セットです。
だったらケースだって、少しくらい良いものを使ったっていいじゃないですか。
それに革ケースをちゃんとつくると、道具そのものまで少し立派に見えます。
そして何より
仕事ができそうに見える。
これです。
もちろん、本当に仕事ができることが一番大事ですよ。
中身がないのに格好ばっかりつけてるのは馬鹿です。
ただ、中身の仕事の質については、一般の人には分からないことがあります。
剪定された木を見て、その切り方や枝の残し方から技術の違いまで判断できる人ばかりではありません。
一方で、服装や道具、仕事をする時の立ち居振る舞いは誰にでも見えます。
そういう目に見えるものは、その人の仕事を知ってもらうための分かりやすい材料のひとつにはなると思うんです。
いい革ケースを使っているから腕もいい、なんてことはもちろんありません。
でも、
「この人ならちゃんと仕事をしてくれそうだな」
と思ってもらえることは、プロとして決してどうでもいいことではないと思っています。
自分でつくるから、自分に合わせて変えていける
そして、自作の道具ケースの一番面白いところは、見た目だけではありません。
自分の使い方に合わせて変えていけること。
これが大きいです。
ゴミが溜まるなら、底を開ける。
少し窮屈なら、横幅を広げる。
必要のない縫い目なら、なくしてしまう。
市販品には市販品の良さがあります。
多くの人が問題なく使えるようにつくられていますし、買えばすぐに使えます。
それに対して自作する場合は、自分一人に合わせて好き勝手に変えられる。
どちらが上という話ではありません。
ただ、自分でつくる人間にとっては、
使う → 気づく → 直す → また使う
ということまで含めて、道具ケースづくりの面白さです。
最初につくったケースから何年も経ちました。
その間に少しずつ形を変え、現在のFelco Classic Sheath 3になりました。
大きく姿を変えなかったのは、最初につくった形がそれだけ自分の使い方に合っていたということなのかもしれません。
そして今も、毎日の仕事で普通に腰からぶら下がっています。
つくったものにとっては、それが一番いいことなのではないでしょうか。
フェルコのためにつくった革ケースは、これだけではありません
Felco Classic Sheathは、わたしがフェルコを入れるためにつくった一番スタンダードな剪定鋏ケースです。
でも、フェルコ用につくった革ケースはこれだけではありません。
Classic Sheathとは違う形に挑戦したのが、DR Felco。
そして、そのDR Felcoに飾りのステッチを取り入れたのが、DR Felco stitchです。
同じ剪定鋏を入れるケースでも、形や仕立て方を変えるとまったく違うものになります。
それぞれ、なぜその形になったのかという話がありますので、よろしければそちらもどうぞ。
また、革ケースではなくフェルコそのものについて知りたい方には、実際に長年仕事で使ってきた立場から別の記事にまとめています。
市販のケースを買えば、それで済む話です。
それでも、わざわざ自分でつくる。
使って、気になるところを直して、またつくる。
一つの剪定鋏から、そんなふうにいくつもの革ケースが生まれました。
たぶん、この「わざわざ」やっている部分こそ、このブログに残しておきたい話なんだと思います。
