ヌメ革に特殊加工を施したこの鋸グリップの味わいはいかがでしょうか?実は今度からこれを使って様々なものを製作しようと目論んでいるところです。
グリップの下にある鋸ケースが素地のヌメ革ですので、いかに加工してあるかがよくわかると思います。と言っても、この加工は大変簡単でして…秘密をお教えしますと、雑草ボーボーの地面に数か月放置すればできあがるのです。
冗談です(笑)
正確には特殊加工というのは冗談で、雑草ボーボーの地面に数か月放置は本当です。お分かりかと思いますが、この白いのはカビなんです。雑菌の多いところに野ざらし雨ざらしにされた後も、そのまま置いておいたためにカビが大発生している状態です。
革製鋸グリップ在りし日の姿

作成時の在りし日の姿がこちらです。
この鋸グリップは当ブログの革ケースのエピソードでかつて取り上げたTOSA-KM240sheathの革グリップです。この鋸ケースのセットは2セットつくったもので、一つはわたしが所持し、もう一つはこの鋸をくれた方が持っていました。それらに関するエピソードが知りたい方は下の記事をご覧ください。
特殊加工が施されることになった経緯
それでこのカビをまとわせる特殊加工を施されることになったグリップは、わたしのものではなく、もう一つの方です。
なんでも、斜面で草刈りだか伐採だかの作業をしている最中に、この鋸を紛失してしまったのだとか。そのことに気付いてその後大分探したらしいのですが、草木が生い茂る広い斜面ですので、結局見つけることができなかったそうです。
この鋸ですが、刃が改良刃になっている手打ちの品で、現在主流の替え刃式鋸ではありません。柄も革で仕立ててある一点物ですので、ご本人はそれなりに大事にしていたようです。はじめ紛失したことは、その現場に居合わせた方から、すごく残念そうにしていましたよと聞いて、それを本人にも確認すると、ちょっと申し訳なさそうな、口惜しそうな様子でした。わたしも自分のものではないですが、表装を仕立てた経緯がありましたので、残念な気持ちでその話を聞いていたのでした。
そんなことはすっかり忘れて、後日その方から伐採を頼まれ、わたしが作業していた時です。ふと、何かが地面に落ちているのを見つけ、拾い上げてよく見ると、見覚えのあるもので、それはまさにかつてわたしが仕立てた革グリップであることに気付きました。10年ぶりぐらいに街で偶然知人と会っても、すぐにわからないのと同じような感じで、一瞬間をおいて「あ~○○さんだ」と気づくような感じです。
こんな偶然って、わたしは呼ばれたのか?
スピリチュアルな事象というのをわたしは信じない質ではあるのですが、この時ばかりは、偶然とは思えない何かを感じてしまいました。こうしてわたしがつくった革グリップをまとった鋸は、持ち主の元に無事戻ったのでした。
カビグリップをどう処理するか?

こちらの画像は、冒頭の画像の反対側です。恐らくこちらが地面に接していたのでしょう。一部表面が分解されているのが見て取れます。恐らく見えていない内側もカビが生えているのではないかと。
ちなみに、鋸刃の部分は、当初錆だらけでしたが、これはしばらく経った後で撮影させてもらったもので、錆は除去済みの状態でした。
カビてしまった部分、これはもうどうしょもないですね。このまま使うとしたら、ガシャガシャ洗ってカビを取って、油分を与えるより仕方なくて、ダメージを受けている部分はどうにもできません。綺麗にクリーニングすれば、使えないこともないでしょう。
汚れた革グリップを綺麗にするシンプルな方法
以前わたしがつくったこの革グリップ。やはりダメージを受けて汚れてしまっているのはどうにも気になっていました。頭の片隅にどうにかしたいという思いがあって、この発見から一年以上が経過したある日、これを自分が美しい状態に戻そうと勝手に決めました。
綺麗にする方法は実にシンプルです。それは新しく作り直すこと(笑)

そうしてできたのがこちらの革グリップです。
以前この柄用に製作したものは、コバは透明、革紐はこげ茶、赤糸で横縫いしたものでしたが、今回製作したものは、コバは黒、革紐は黒、赤糸でベースボールステッチにしています。
これを送ってから、一つ心に引っ掛かっていたものが取れた気がしました。
鋸や鋏は失くしやすいといえども

作業をしていると鋸や鋏などは、枝に引っ掛けたりで、いつの間にか落下して紛失しやすいものではあります。
だけど、大きな鋸を地面に置きっぱにするという事態は自分ならちょっと考えにくいことです。
この鋸は件のカビグリップの方の現場である日見つけた落とし物です。
場所は伐採のガチャガチャした現場。わたしが地面に落ちていたのをみつけ、失くさないように切り株の上に置いて撮影したショットがこれです。
そりゃあ簡単に失くしますって(笑)