オリジナルの革ケースはいくらする?ハンドメイド革ケースの値段を考えてみる

剪定革ケース3点セット

このブログでは、これまでいろいろな革ケースを紹介してきました。使う道具に合わせて型紙から考えた完全オリジナルのものがほとんどです。

そんな革ケースを見ていると、

「これ、もし買うとしたらいくらくらいするんだろう?」

と思う方もいるようです。

先に言っておくと、わたしは革ケースを一般販売しているわけではありませんし、不特定多数の方からオーダーを受けているわけでもありません。

ただ、これまで知り合いから頼まれて革ケースをつくり、お代をいただいたことは何度もあります。ブログの中でも「頼まれてつくった革ケース」という話は何度も登場しています。そこでお代について触れている記事もあれば、特に触れていない記事もありますが、全部タダでつくってきたわけではありません。

では、このブログで紹介しているようなオリジナルの革ケースに値段をつけるとしたら、いくらくらいが妥当なのでしょうか。今回は、実際につくってきた経験をもとに考えてみたいと思います。

ただ、その前に。わたしの場合、値段以前にもう一つあります。

誰にでも革ケースをつくるわけではありません

知り合いから頼まれたからといって、誰にでも革ケースをつくるわけではありません。

じつは、相手を選びます。

今思いつく基準は、大きく二つ。

一つは、つくった革ケースを大事に使ってくれそうな人かどうか。せっかく時間をかけてつくるので、最初から雑に扱いそうな人には、あまりつくりたいとは思いません。

……とはいえ、この「人を見る目」がどこまで正しいのかについては、ちょっと考えさせられる出来事もありましたが(笑)

もう一つは、

「知り合いなんだから安くつくってくれるよね」

と最初から考えている人ではないこと。

そういう人には、たぶんつくりません。

別に、

「高い金を払ってくれ」

という話ではないんです。

知り合いですから、こちらの判断で安くすることもあります。場合によっては、タダでつくることだってあります。

ただ、

「知り合いなんだから安くして当然」

と相手の方から思われるのは、ちょっと違いますよね。

ハンドメイド品やオーダーメイド品が高くなること自体は、今ではそれほど珍しい感覚ではないと思います。

少し話が変わるのが、

「趣味でつくっている知り合いに頼む場合」

です。

「趣味なんだから、そんなに高くないよね」

「知り合いなんだから、安くつくってくれるよね」

「好きでやっているんだから、つくるのも楽しいでしょ」「ついでに相手も喜べばWinWinじゃん」

そんな感覚は、少なからずあるのかもしれません。

もちろん、革ケースをつくること自体は好きです。

でも、好きだからといって、革がタダになるわけでもない。道具がタダになるわけでもない。

今まで身につけてきた技術が、突然ゼロ円になるわけでもありません。

そして何より、

知り合いになったからといって、型紙をつくる時間が半分になるわけでもないんです(笑)

逆に、このブログによく登場するニョンパさんのように、こちらが考えていたより少し多めにお代を払ってくれる人もいます。

そういうことをされると、

「じゃあ、もう少しいいものをつくってあげようかな」

と思うんですよね。

頼まれていないところまで手をかけたり、場合によっては、

「今回はもうお金はいらないよ」

となることだってあります。

多めに払おうとしてくれる人には、こちらが安くしたくなる。最初から安くしてもらおうとしている人には、つくりたくなくなる。

なんだか面倒くさい人間ですが(笑)、結局はお金そのものではなく、

こちらの時間や手間を、相手がどう見てくれているか

ということなのだと思います。

革ケースをつくることは好きです。だからこそ、誰のためにその時間を使うのかくらいは、自分で決めます。わたしにとっては、そこも革ケースの値段を考えるうえで無関係ではありません。

革ケースの値段は材料費だけでは決まらない

では、実際にオリジナルの革ケースをつくるとして、その値段は何で決まるのでしょうか。

一番わかりやすいのは材料費です。

革。金具。糸。接着剤などの消耗品。このあたりは比較的計算しやすいですよね。

でも、実際につくる側からすると、それだけで値段を考えるわけにはいきません。

作業時間

革ケースは、革を切って縫えば終わりではありません。

  • 実際に入れる道具のサイズを測る
  • その道具を図面化する
  • どんな形にするか考える(設計する)
  • 型紙をつくる
  • 必要なら試作する
  • 道具を実際に入れてみる
  • 具合が悪ければ修正する

そして、ようやく本番の革を切って、穴を開けて、縫って、仕上げる。

完全オリジナルであれば、完成品そのものをつくっている時間以外にも、かなりの時間を使います。

仮に材料費が3,000円だったとしても、一日かけてつくった物を、

「材料が3,000円だから3,000円で」

とは、なかなかなりません。

少なくとも、わたしなら困ります(笑)

道具や消耗品

レザークラフトに使う道具

革を切る道具。穴を開ける道具。縫う道具。削ったり磨いたりする道具。

もちろん、一つの革ケースをつくるたびに全部買い直すわけではありません。それでも、ものをつくる環境を整えるにはお金がかかっています。

趣味でつくっているからといって、ここがゼロになるわけではありません。

技術と経験

さらに、完成した革ケースからは見えにくいものがあります。

つくれるようになるまでに使ってきた時間です。

型紙のつくり方。革の扱い方。どこを補強すれば丈夫になるのか。どうつくれば使いやすいのか。

当然、失敗もしています。

「こりゃダメだ」

となった物も数知れず。

そういうとんでもない積み重ねがあって、今つくっている革ケースがあります。

もちろん、

「覚えるのに100時間かかったから、100時間分を今回の値段に乗せます」

なんてことは当然しませんけどね。

でも、これまで身につけてきた技術や経験を、まったく価値のないものとして考えるのも違うのではないでしょうか。ですから、オリジナルの革ケースに値段をつけるなら、少なくとも、

材料費+作業時間+道具や消耗品+技術や経験

くらいは考える必要があります。

全てのものに共通する値付けの根拠は大体こんなもんで、それにプラスしてブランド価値があれば、それが上乗せされるのだと思います。

実際の革ケース3点セットではどれくらい時間がかかった?

では、実際につくった革ケースを例にしてみます。

このブログでも何度か登場している、木鋏・剪定鋏・鋸の革ケース3点セットです。

オリジナル剪定革ケースセット2015年

この革ケースセットをつくったときのことは、別の記事で紹介しています。

→この革ケースセットをつくったときの話はこちら

完全にゼロから考えたものではなく、それまで使ってきた型紙をベースにしながら、使う人や道具に合わせてカスタマイズしてつくりました。

それでも、デザインや型紙の調整などにだいたい1日。実際に革を切って、穴を開けて、縫って、仕上げるまでに2日ほど。ざっくり3日くらいは使っています。

もちろん、朝から晩まで休まず3日間つくり続けたという意味ではありません。考えている時間もあれば、道具を入れて具合を見たり、修正したりする時間もあります。でも、それも含めて製作です。

仮に一日8時間として3日なら24時間。

時給1,000円で考えても24,000円。

1,500円なら36,000円。

2,000円なら48,000円。

そこに材料費が加わります。

しかも、これは道具代や、それまで身につけてきた技術などをほとんど考えていない単純な計算です。こうしてみると、一人のためにつくる一点ものが市販品より高くなること自体は、それほど不思議ではありません。

市販品と一点ものでは、そもそもつくり方が違う

市販されている革ケースなら、同じ型紙を何度も使えます。材料もまとめて仕入れられます。同じ作業を繰り返せば、製作も効率化されて速くなります。

最初にデザインや型紙をつくるために使った時間も、10個、100個とつくれば、一つあたりの負担は小さくなります。

でも、一人のためにつくった一点ものでは、その時間を分散できません。

採寸した時間も。デザインを考えた時間も。型紙を直した時間も。

全部、その一個のために使った時間です。

ですから、

「市販品が5,000円くらいだから、オリジナルもそのくらいで」

とは、なかなかなりません。

同じ革ケースでも、つくられ方が違うからです。

革ケース製作風景

では、この革ケースはいくらなら妥当なのか

「で、結局いくらなの?」

という話ですよね。

これが、なかなか難しい。

先ほどの3点セットなら、普通に仕事として人件費まで考えれば、数千円で済むようなものではありません。

材料費その他諸々+植木屋の手間賃×3日分と考えれば、数万円になっても、まったく不思議ではないと思います。

これが一つの答えです。

ただし、わたしは革職人として商売をしているわけではありません。

知り合いから頼まれて、

「じゃあ、つくってみようか」

というところから始まります。

そうなると、本来の価格と、実際にもらう金額が一致しないことがあります。

知り合いだし。自分もつくってみたいし。勉強にもなるし。

まあ、このくらいでいいか。そんなこともあります。

先ほどの3点セットも、材料費や作業時間をすべてきっちり計算した金額をもらったわけではありません。普通に仕事として考えれば、もっと高くなっていたと思います。

それでも、市販されている革ケースに慣れている人から見れば、

「高いな」

と思う値段だったはずです。

つくる側から見れば安い。
買う側から見れば高い。

一点ものでは、こんな妙なことが起こります。

「知り合い価格」は、その革ケース本来の価格とは別もの

知り合いだから安くする。場合によってはタダにする。

わたしにも、そういうことはあります。

でも、それはその革ケースそのものの価値が安いからではありません。本来ならもっとかかるものを、こちらの判断や好意で安くしているだけです。

だから、

「前にあの人には安くつくったんだから、自分にもその値段で」

という話にはなりません。

同じ商品を、同じ条件で販売しているわけではないからです。

使う革も違う。形も違う。かかる時間も違う。

そして、わたしの場合は、誰につくるのかまで違います。

ですから、

「オリジナルの革ケースなら○円」

と一つの金額で答えることはできません。

ただ少なくとも、このブログで紹介しているような、道具に合わせて一つずつつくる革ケースについては、

材料費だけ、あるいは市販品の値段だけを基準に考えると、かなりズレる。

これは言えると思います。

値段というのは数字ですが、人のために何かをつくるとなると、数字だけでは決まらないところもあります。

わたしにとって革ケースづくりは、たぶんそういうものなんだと思います。

そして、先ほど例に出した革ケース3点セット。市販品と比べれば、決して安くないお代もいただきました。

だから、

「これならきっと大事に使ってくれるだろう」

と思っていたんです。

……ところが。

数年後、久しぶりにその革ケースを見たら、なかなか衝撃的な姿になっていました。

その革ケースがその後どうなったのかについては、こちらの記事で書いています。

→あの革ケースセットがズタボロに……その後の話はこちら

値段を考えるのも革ケース。

つくるのも革ケース。

そして、つくったあとにどう使われるのかを見るのも、また革ケース。

このブログでは、そんなところまで含めて、これからも革ケースの話を書いていこうと思います。