チョンボ棒 | YABUKARAのエピソード

今回製作した革カバーと言いますか、革グリップと言いますか、これがそもそも何をするための道具なのか?こうして見ると、見たこともない。今まで世界に存在しなかった道具かのように見えなくもないような。
名称としてはタイトルにもあるように、俗に「チョンボ棒」なるものに近い道具で、簡単に言うと、樹上でロープを手繰り寄せたりするのに使うものです。

YABUKARAの仕様と出来栄え

用途の詳細はひとまず置いておくとして、今回製作した部分に関しては、このように丸い筒のまわりを革で包み、抜け止め兼ストラップを付けたベルトを縫い付けたというところです。

今回の出来ばえに関して、元からこういうものかな?ってくらいには馴染んでいるような気がします。ですが、上下の黒いあからさまなプラスチック部分と革のミスマッチが際立っているように感じるのと、のっぺりとし過ぎて面白味には欠けるかなと。見事にイメチェンを果たしてはいますが、イメージしたのより平凡な出来になってしまったというのが作者の感想であります。

ハーネスにつけた状態

既製品のイメージを払拭する試み

イメチェンというのも、当初の目的としては、下の画像のように革でカバーする前の商品デザインが、あまりにもあんまりフィッシャーだった、などの理由でそれをなんとかしたいというのがありました。
実はこれ、元は魚をすくうのに使う玉(たも)の柄でして、この棒の先には 玉(たも) を取り付けられるようになっています。元のデザインとしてはこのように釣り竿感があるものでした。

これは釣り竿のように伸びる仕様となっています。
先ほど、抜け止め兼ストラップと書きましたが、このように伸びるので、あまりないとは思いますが、不意にひっくり返って竿が飛び出てこないように、安全装置のストッパーを付けたわけです。

抜け止めストッパーは、当初、革のストラップをグルっと金具の首に1周させるなどして、最終的に本体のところにボタンで固定しようと考えていました。そうすればグラつかないし、見た目にもきちっとした収まりになります。きっちりした性質のジャパンメイドならそうなっているでしょう。

YABUKARAの特徴的なストッパー

ところが、出来上がったものはコレ。全然固定されてないし。
いやね、固定方法について再考しながら、試しに、ハギレでこさえた革ベルトの先のD環をいじくっていたら、なんとなくこんな感じになって、これで十分だわ~とそのまま行ってまいました。

玉柄LGSスーパーナノ300の特徴とカスタマイズ

玉柄の話をします。この製品は仕舞寸法がコンパクトですが、最大3mまで伸び、カーボン製で軽く、耐久性もあって、機能面で優れた製品だと思います。また、概ねこのデザイン自体もいいものだと思いますよ。上の画像からは伝わらないかもしれませんが、決して安っぽさはありません。
でもね、いくつかの点が自分にとっては気になり、改善できればと思ったわけです。自分が使うシーンもそうですし、誰であれ人が使う道具は、その人自身を投影したものとなると思います。

どういった点が気になったか。まず、商品名がデカデカとプリントされていて自分好みじゃないというところ。
おっ、アイツが使ってる柄いいやん。なになに「ランディングギア シャフト スーパーナノ300」か。「CATCH THE BIG ONE」だってよ。素敵やん♡俺も買うやん♡となるにしても、既に手にした人にこの商品名のプリントは不要です。

次に、気になったのが、ストラップの部分。携帯しやすいように気を利かせてくださっていることには、メーカーさんの思慮が見えて好感が持てるものの、このパーツが製品のデザイン的価値を著しく損なっています。と思います。誰かが懸命につくった製品をディスりたいわけではないので(もう十分ディスってるって?)、これ以上は何も言うまい。ただ、自分が携帯するなら別の仕様にしたいと思ったところでした。

そして、先ほども書いた通り、全体として釣り竿感が強く、わたしは「水辺で魚を捕獲したいわけではない」、どちらかと言えば、「木に登ってロープを捕獲したいのだ」。
それにふさわしいデザインとは?自分が身につけたいと思えるものとは?といったところが大事なポイントです。

結果として、上記したような改善したい点をカバーするという点においては一定の成果は収めたものの、自分としてはデザイン的に今一つ惜しい出来となりました。どうすればもっとカッコ良くなったのか、デザインをもう一度見直して、次の竿につなげる、といことはまあないでしょうねwこんな物いくつもいくつも所持するようなもんではないですから。

通称チョンボ棒、適切な名称は?

ところで、このような道具は昔ながらの植木屋には、あまり馴染みのないもので、どちらかというと林業や伐採屋が使う道具ではないでしょうか。そして、形態的に確立された商品というものがなく、既存の製品にそれぞれが工夫を加えて使っているような状況です。したがって、林業で使うこのようなものを指して何というのかも曖昧なところがあります。そもそもチョンボ棒という名称も、「何かを引っ掛けたりする長い棒」程度の広義な使われ方をしているようにも思います。

わたしが浅~く調べたところによると、岩場を登るクライミングの世界で、届かない位置(アンカー)にカラビナをクリップするのに使う棒を、一般的にチョンボ棒ということが多いようです。別名をプリクリップ棒とか他にもいくつか名前があって、言ってみれば定まっていません。

一方で、わたしのような業界で何と呼ばれているのか?林業とか伐採業界の人たちの間では、「如意棒」と言ったりするようですが、これが全国的に通じるワードなのかは不明です。
考えるに用途から言って、【導く、先立つ、糸口】などの意味を持つ「リード」と【棒、(釣り)竿】などの意味を持つ「ロッド」を合わせて、「リードロッド」「リーディングロッド」ぐらいのシンプルかつ普通な名前でどうだろう?

ただ、上記したように、そもそもこのツールは道具として確たる形態が定まっていません。まあ、ネーミングの事は、確固たる道具としての形ができてからだ。わたしの場合、この道具の柄の部分は既製品を転用するとして、もう一つ、ロープやカラビナを引っ掛けたり、引っ張ったりする重要なパーツ。柄の先につける何かが肝です。これが出来上がらなければ、道具としては成立しない。

YABUKARAが出来上がるまでの道筋

さて、時をさかのぼること、玉柄を購入する数か月前のこと。わたしは、通称「如意棒」と呼ばれる道具の柄にあたる部分に、どんなものを使えばいいか探していました。条件としては、2~3mまで伸び、縮めた時コンパクトで、かつ軽くて丈夫、そしてもちろん安いもの(最大3,000円くらいまで)という希望です。実際に近しいものを探してみると、条件に合致するものは中々ありませんでした。例えば、電気配線用の電工キャッチャーや、二階の窓ガラスを外から拭くことができる柄、自撮り棒のロングバージョンなどが挙げられます。惜しいものとして、クライミングで使われる製品がありましたが、良さそうな製品は1万円以上。少しばかり伸びるただの柄が、単なる棒が1万円...。とてもじゃないがわたしには手が出ません。馬鹿にしないでいただきたい!
そう憤慨しながらさらに探していると、素材としては 玉(たも) の柄が良さそうだという情報を掴みました。そして、先ほどの商品をみつけたというわけです。
ただ難点として、お値段がちょっと...。ですが、棒に1万円以上の値がついているのを目撃してしまったあとでは、5~6千円はお買い得に思えました。だって半額以下だよ。
まあいい、柄の先につけるパーツは自作品だ。小さな金具をつくるのに大した材料費は必要あるまい。そう考えて、当初の予算の倍の金額を出して柄を購入しました。

そして、玉柄が届いてから、それを前に先っぽのパーツをどう作るか頭を悩ませました。
似たような商品や既存のアイディアをネットで検索すると、S字状になった先端がついた商品や針金のような金属を曲げて作ったもの、塗装用ローラーを転用したものなど、色々なヒントが点在していました。どのみち材料費は数百円だし、実際には、作って使って改良して、その作業を何度か繰り返すんでしょうね。

そんな風に考えていたら、おもしろいプロダクトを見つけました!しかも、売ってる。まさかのわたしが欲しい先っぽだけを!!
それは以前から時々読ませてもらっていた「木登り日和」というブログの中にありました。
作者はこのブログ主のサンデーツリークライマー(アカウント名)ニックさんです。ご自身はサラリーマンをしながら、趣味で始めたツリークライミングや伐採作業好きが高じて、ついにはオリジナルの道具の製造販売まではじめてしまった方のようです。
そして、その記事がこれ。

【グルグルフック新発売!】https://sundaytreeclimber.hatenablog.com/entry/2022/07/23/223159

世の中にまだないものの価値

「グルグルフック」、この製品の詳細については、わたしが説明するよりも木登り日和を読んでもらうとして、感激したのは、まさに自分が欲しいと思っていたドンピシャのパーツが既に製品として販売されていたこと。そして、今まで確たる形がなかったものをサンデーツリークライマー(愛着を持ってわたしの中ではそう呼んでいる)のニックさんが、試行錯誤しながら、販売できるくらいの完成度に仕上げて提供してくれていることです。
それでお値段はというと送料込みで3,000円ちょっと。ボルトと金属の棒を曲げただけの単なる小さな金具。材料費で言えば、当初考えていたように数百円です。でもそれが何ですか!そこには経験と創意工夫というお金では買えないものが詰まっている。お値段以上の価値を感じました。

インスパイアでズルズルガバガバ

と、まあこのように柄の選定で迷い、先端金具であれこれ考えてくると、まだ一度も使用していない道具にも不思議な愛着がわくというのが人情です。
インスパイア ザ ネクスト!
ここまで来たら、外装もちょっと手直ししたいという気がむくむくと湧いてきて、久しぶりに全く新しい道具のための革細工を作ってみたくなりました。そうして出来上がったのが今回の製作物です。
経緯としてはこうです。
「柄は大事!柄がしょーもなかったら、まず始まんないかんね」→ただの柄に5,000円。
「まあ柄も大事だなんだけどさ、この道具のかなめは先端部分だよね~」→小さい金具に3,000円。
「やっぱ見た目が一番大事っしょ!」→不要な外装のカスタムに10,000円はかかってる?
気づけば市場価格にして2万円はくだらない代物になっていました...。よくもまあズルズル、ガバガバと。

YABUKARAの由来

最後に、この道具の一般俗称「チョンボ棒」という名前。これはなんともダっせーですね。連想されるイメージが最悪だ。わたしはズルをしているんじゃないんです。ただ純粋に楽になりたいだけなんだ!
「如意棒」というのも、キーボードで打ち間違って何度「尿意棒」と誤変換されてしまったことか。汚らしい!
この道具のカナメはやはり先端部分。そこにクローズアップすれば、ニックさんの「グルグルフック」。このネーミングは妥当かもしれません。
先ほど書いたように、用途全体から考えるとわたしは「リードロッド」を押したいと思います。
そして、グルグルフック付き玉柄(レザーVer.)である今回のプロダクトは、タイトルにあるように「YABUKARA(やぶか⤴ら)」です。
突然葉っぱの茂みから棒がニョキっと出てきたら、樹上にいる生き物はさぞかしビックリして飛び上がることでしょう。それはまさに「藪から棒に」です。