期待のバッグのその後

手作り感あふれるハンドメイド革バッグ1

このバッグはというと以前紹介したことのある代物でして、子供が小学校に上がる際に入学祝いとして製作しプレゼントしたものです。その時の話は以下の記事からご覧になれます。

この記事で書いた通り、このバッグは『まあそうだよね』という結末を迎えまして…というのも、あげた瞬間は喜んでくれたものの、その後は見向きもされない存在となり、長らく部屋の隅に追いやられることとなりました。
作ってから1年くらいは、子供のハンガーラックの端に掛けられて、使われることなく忘れられているのを見て、時々わたしはそれを手に取り、『なかなか味わい深いバッグなんだけどなぁ』と首を傾げ、哀愁を感じていました。わたし自身は大まじめに、『これはなかなかいいぞ』と思いながら作っていて、小学生がこれを斜め掛けして歩いている姿のかっこよさを想像していたのですが、妻からは「小学生にはちょっと…」という評価で、案の定これはほとんど使われることなく捨て置かれる状態が続きました。そして、わたし自身も年月の経過とともに、このバッグのことを忘れ去って行ったのでした。

期待のバッグカムバック

月日は流れ、小1だったあの子も中一から中二になる頃です。特にきっかけがあったというのでもないと思いますが、気が付くと件のバッグを時々使うようになっていました。
こう言うと、「期待して作ったバッグが使われるようになってうれしくないのか?」と問われそうですが、あれから6~7年以上が経過しているんです。このバッグに対して、作った時のような熱量をわたしも失っているものですから、『ああ、なんか使ってるなぁ』くらいの他人事です。

ただ、ここのところ遊びに行く際は、結構頻繁にこのバッグを持って行くようになっていまして、ある日この子がバッグを持って来て、こう言ってきました「ベルトが短いんだけど何とかならない?」

ハンドメイド革バッグ手直し前

「ちょっと掛けてみな」と言って見てみるとこんな感じでした。さすがにちょっと短い 笑笑
そもそもこのバッグはベルトの長さを小学生用に設定していますので、中学生が掛けるとこうなるのも無理はないのです。
今更使い出したこともあって「これ小学生用に作ったからね~」とわたしが半ば呆れ気味に言うと、「このバッグは小学生には早いって!」と返されてしまいました。

『やっぱりそうなのか』と今更ながら思いましたが、ようやくこのバッグの良さに気づき、同時にこれをいいと思って作ったわたしの感性に、息子が近づいてきたような気がしてうれしく思った次第です。
「何とかしてくれ」というからには、本人的にはもうしばらくはこれを使う気があるようでしたので、父ちゃんは何とかしないといけません。

期待のバッグの特徴

ハンドメイドクロスステッチ 革縫い

さて、このバッグですが、冒頭に紹介した過去記事でも説明している通り、教本の型紙をちょっといじった程度のものでほぼ教本通り、わたしのオリジナルではありません。その教本というのは下のやつでして、この本の中のバッグを見て気に入り、それを実際に作ってみたのでした。

当ページのリンクには広告が含まれるものがあります

一般的に、売られているバッグのベルトは長さ調節ができるようになっていますよね?
でもこのバッグは長さ調節ができません。教本通りに作成したからそうなったと言ってしまえばそうなのですが、調節ができた方が便利に決まっているのに、なぜ、そのようになっていないかということを考えてみると、いくつか思い当たることがあります。

まず、考えられることの一つは、作るのが難しくならないようにした、ということがあると思います。この本は入門書的なものですので、初心者にも作りやすい作品がつくり方と共に紹介されています。長さ調節を可能にするには、特殊な金具が必要だったり、色々と小細工が必要だったりで、難易度が上がってしまうことを避けたと考えられます。
もう一つは、見た目をかなり意識したということが言えると思います。このバッグは全体を通して、実にシンプルなつくりであり、ハンドメイドの温かみがあって、デザイン的な力もあります。ベルトの革は3〜4mmの厚みがあって、長さ調節のための金具や継ぎ目がないことで、見た目に明快でスッキリと見えます。潔く明快な美しさというのはいいもので、それがこのバッグを作ろうと思った動機でもあります。

そういうわけで兎にも角にも、このベルトの長さを長くする方法を考えなければなりません。

バッグのベルトを長くする方法を考える

子供にどれくらい伸ばせばいいのか聞いたところ、ベルトが20㎝程長くなればいいということがわかりました。元々のベルトの長さが100㎝でしたので、120㎝位になればいいということです。

さて、このバッグの肩掛けベルトを20㎝長くするとして、どんな方法が思い浮かぶでしょうか?
最もシンプルかつ元の雰囲気を変えない方法として考えられるのは、単純にもっと長いベルトに全取っ換えすることです。

はじめはそう考えて、ベルト用の革を買いに行こうと思ったのですが、『待てよ、そういえばこのバッグを作った時に使ったベルトの切れ端が確かまだあったよな?』と思い至りまして、そいつを見つけて引っ張り出して来たところ90㎝程の長さがありましたので、20㎝伸ばすには足りそうでした。そういうわけで全取っ換えはやめて、切れ端をどうにかして足す方法に決めました。

ただ、足すといっても色々あります。使えるのは90㎝の切れ端で、どの位置で足すか、どうやって足すか、ということを考えると何通りも方法が浮かんできました。

ベルトの傷み箇所

最終的には、既存のベルトにこの画像に写っているような割れや傷みが見られましたので、その部分をうまく切除しながら目的の長さまで伸ばす方法が良さそうでした。具体的には、既存ベルトの中ほどを大きめに切り取って、80㎝のベルトを継ぎ足して、全体の長さを120㎝にするという方法を取りました。

継ぎ足す方法として、はじめは継ぐ箇所の革と革を突き合わせて足そうと考えたのですが、それだと強度的にあまり強くないので、最終的には継ぐ箇所の革と革を9㎝程重ねて縫い付ける方法としました。
ステッチはバッグ本体と同じクロスステッチも方法として考えられましたが、シンプルに平縫いとしました。

期待のバッグ-リニューアル後の姿

ハンドメイド革製ショルダーバッグ

シンプルに長いベルトを買ってきて付けかえればいいものを、なんやかんやと考えた挙句に完成した姿がこちらです。
継ぎ足した部分がごつく、大袈裟になってしまったようではありますが…まあ、これはこれで悪くはなかったのではないかと思っています。息子も喜んでくれましたので。
全体の雰囲気やバランスを考えつつ、既存のものをリニューアルするのは結構センスが必要な作業だということが改めて身に染みた一件でした。

期待のバッグの行方

ハンドメイド革バッグ手直し後

リニューアルしたバッグを掛けた姿がこちらです。

どうでしょう?
この長さでは、ちょっとジャストサイズすぎるような。

わたしとしては少しでも長く使ってもらえると喜ばしいんですが。なので「お前はもうちょっと大きくなるつもりはないんか?」「身長が伸びたらまたベルトを伸ばさなきゃならないよ?」「もうちょっと長くしなくていいの?」などなど何度か聞いたのですが、「これでいい」と本人がおっしゃいますので、この長さに落ち着いたという顛末です。
さてこのバッグ、いつまで使ってくれることやら。

小学校入学時、この手作りバッグを作った時には、子供の節目々々に手作り革物をプレゼントしようという構想があったのですが、好まれない、使われないものは、こちらの一方的な思いだけであげても仕方がないと思うようになり、結局、中学入学時には、娘にも息子にも何も作ることはしませんでした。
でも、こうして愛用してくれる日が来たことには感慨深いものがありますね。

わたしが普段製作しているものは、植木屋が使う革ケース類にほとんど限定されています。今後、革ケース以外のこのようないわば課外活動はどうなって行くのか。私にもわかりませんが、ちょっと楽しみではあります。